ナウシカ復活の感動展開←最初は別展開考えてた宮崎駿が「よかったのか?」と思ってる部分とは 「宗教絵画になっちゃう」
ジブリの鈴木敏夫プロデューサーによると宮崎駿監督は、最後の最後まで悩んで、完成しても「これでよかったのか」と考え続ける「面倒くさい人」なのだそうです。でも、「だからこそ名作を生み出せる人」と褒めたたえています。
高畑&鈴木「これはないな」

2026年8月14日の「金曜ロードショー」で、スタジオジブリの名作『風の谷のナウシカ』が放送されます。1984年の公開から40年以上が経った今でも、「つい観てしまう」という人は少なくないでしょう。
【画像】え、「たしかにそれっぽくはあるかも」 コチラが宮崎駿が「宗教絵画」に例えた『ナウシカ』の場面です
『ナウシカ』のクライマックスといえば、傷ついた「ナウシカ」が「王蟲」の金色の触毛に持ち上げられ、命を吹き返すシーンです。映画史に残る名場面ですが、実はこのラストは、宮崎駿監督が最初に考えた結末ではありませんでした。
原作者であり、映画の脚本も手がけた宮崎監督が当初考えていたラストは、「暴走する王蟲の群れの前へナウシカが舞い降り、その姿を見た王蟲たちが動きを止める」……というものです。
ところが、この絵コンテを見て異を唱えたのが、プロデューサーの高畑勲さんと鈴木敏夫さんでした。「これはないね」と意見が一致したふたりは喫茶店で長時間話し合い、高畑さんが結末を3つのパターンに整理します。
ひとつは宮崎監督の当初案である「ナウシカが王蟲を止める」、ふたつ目は「ナウシカが命を落としたまま終わる」、そして3つ目が、現在の映画で採用された「ナウシカがよみがえる」という案でした。
高畑さんと鈴木さんは、「娯楽映画として観客を感動させるなら、この結末しかない」と考え、「ナウシカがよみがえる」案を推します。宮崎監督は最後まで悩みましたが、最終的にその案を受け入れ、王蟲がナウシカを金色の触毛で抱き上げる、あの名シーンが誕生したのです。
しかし、完成後も宮崎監督の胸には引っかかるものがありました。公開翌日に行われた雑誌インタビューで、次のように振り返っています。
「僕としてはナウシカの前面で王蟲を止めたかった。でも止まるわけがないんです。だから命を投げ出したナウシカが死んでしまう。これは仕方がないんだけど、そのナウシカが持ち上げられて朝の光で金色に染まると、宗教絵画になっちゃうんですよね!(笑)……あれ以外の方法はなかったかと、ずっと考えてるんです」
つまり宮崎監督は、現在のラストが物語として最善の選択だったことは認めながらも、「もっと違う表現があったのではないか」という思いを抱いていたのです。
今では『風の谷のナウシカ』を象徴するラストシーンですが、その誕生までには、宮崎監督、高畑さん、鈴木さんの3人による徹底した議論と試行錯誤がありました。
公開から40年以上が経った今も語り継がれる名場面でも、「あれ以外の方法はなかったのか」と考え続ける。そんなにも作品に妥協しない人だからこそ、宮崎駿監督は世界中の人びとの心に残る作品を生み出せたのかもしれません。
参考書籍:「ジブリ・ロマンアルバム『風の谷のナウシカ』」(徳間書店)「映画道楽」(ぴあ)
(石原久稔)



