韓国映画「サヨナラの引力」が、7月3日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国で公開される。同作は、2018年に中国で公開され⼤ヒットした映画「僕らの先にある道」のリメイク。韓国では口コミで広がり3週にわたって週末興行ランキング1位に輝き、観客動員260万人を記録。多くの共感を集めてロングランとなった話題作だ。かつて愛し合ったが別れを選んだウノとジョンウォンが、10年後の偶然の再会をきっかけに記憶をたどり、忘れられない恋を思い返す様子がつづられる。
監督は「82年生まれ、キム・ジヨン」のキム・ドヨン。映画「脱走」やNetflixシリーズ「D.P.-脱走兵追跡官-」「誰だって無価値な自分と闘っている」で知られるク・ギョファンが不器用だが誠実な工学部生ウノ、ドラマ「⼥神降臨」、Netflixシリーズ「愛と、利と」、ドラマ「瑞草洞<ソチョドン>」のムン・ガヨンが厳しい現実の中で建築家を目指すジョンウォンに扮した。
映画ナタリーでは、ク・ギョファンの来日時に彼が敬愛する映画監督・岩井俊二との対談をセッティングした。ク・ギョファンは岩井作品との出会いを振り返り、クリエイターとして彼の映画から受けた影響を明かす。岩井は「サヨナラの引力」の物語に似た若き日の経験を振り返りつつ、長編デビュー作「Love Letter」が生まれた経緯を紹介。さらに対談の最後には「一緒に作品を作るとしたら……」という話題も飛び出した。
取材・文 / 西森路代撮影 / 井上ユリヘアメイク / 小林麗子
映画「サヨナラの引力」予告編公開中
映画の中のキャラクターとビールを飲みたくなる(ク・ギョファン)
ク・ギョファン いつも作品を拝見していました。お写真で見ていた監督の姿とお変わりないですね。
岩井俊二 そうですか、ありがとうございます。実は先月、日本版の映画「寄生獣」を観ていたんです。その後、この対談のお話をいただいてからク・ギョファンさんが出ているNetflixシリーズ「寄生獣 -ザ・グレイ-」を観ましたが、大変面白かったです。
ク・ギョファン それはとてもうれしいです!
──ク・ギョファンさんは岩井監督の作品のファンだということで、映画をご覧になったきっかけはどんなことだったのでしょうか?
ク・ギョファン 韓国では皆さんが同じ体験をしていると思いますが、1999年に韓国で「Love Letter」が公開されて、僕も当時初めて観ました。その次は「四月物語」。すごく若い頃に観たのですが、岩井監督の映画は、観客が物語の世界に入り込める魅力がありますし、今もその人物がどこかで生きているような気分にもなります。本当に実在している人の物語を目にしている感覚になったのを、今でもリアルに覚えているくらいです。岩井監督の作品はすべて好きですが、特にお気に入りなのは「PiCNiC」と「スワロウテイル」ですね。物語の中の人物がすごく身近に感じられて、観終わったあとに、映画の中のキャラクターとビールを飲みたくなりました。それと、僕は朝のルーティンとして運動をするときに「スワロウテイル」の主題歌「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」を聴いています。不思議な力が湧いてきて前進できる気持ちになりますが、友人にその話をすると、なぜか不思議そうな顔をされるんですよ……(笑)。
岩井 なんだか、すごく光栄ですね。
──ク・ギョファンさんが語られているように、長編デビュー作の「Love Letter」や「スワロウテイル」など多くの作品が海外に紹介され、今も変わらず影響力の大きさを実感しています。監督自身はこのことをどう受け止められていますか?
岩井 映画を作るようになって30年くらい経ちますが、自分の作品のことを好きだと言ってくださる方が韓国にたくさんいらっしゃって、励まされます。作り続ける原動力にもなっていますね。
「サヨナラの引力」に新しさを感じた(岩井)
──ク・ギョファンさんにとって、日本映画として初めて「Love Letter」を観たときは、どんな衝撃があったのでしょうか?
ク・ギョファン 映画を構成するすべての要素が面白かったです。アングルや音楽、ユーモアも。「どんな映画が好き?」と尋ねられたら、必ず岩井監督の作品を挙げたくなります。それと、映画は2時間掛けて物語を紡ぐものだと思っていたのですが、短くてもこんなに面白いものが作れるんだ!と驚いたこともありました。特に「この映画はここで終わっていいんだ」と感じられたのが「四月物語」でした。
岩井 ありがとうございます。僕もク・ギョファンさんが主演を務めた「サヨナラの引力」を拝見しました。お話自体はシンプルなものですが、ファンタジー要素を一切使わずに、観客がすでにわかっている結末へと向かっていく。過程をとにかく丁寧に描写していくところに、新しさを感じましたね。
ク・ギョファン 岩井監督に僕の映画を観ていただけてとてもうれしいです。このお話は、ウノとジョンウォンという2人の長い期間にわたる“縁”の物語じゃないですか。きっと同じような経験をした方も多いと思います。だからこそ、自分なりのエンディングを作ることができる映画だと思いました。僕が演じたウノは、お客さんに物語を紹介するストーリーテラーのような役割がありましたね。それと、別れた人とまた偶然に再会するというのもなかなかないことですし、そんなことが描かれている映画というのも面白いなと感じて、出演を決めました。
岩井 僕も若い頃に「サヨナラの引力」のような経験をしたことがありました。でもその経験を映画にしようとは思わず、自分なりに作れたのが「Love Letter」。当時「サヨナラの引力」みたいな作品を作ろうとすると、自分にとって生々しくなってしまったと思います。失恋をそのまま物語にする場合は、作品との距離が取れないから、距離を遠ざけて作ったら「Love Letter」になったというね。でも、自分が年齢を重ねていくと、若い頃には生々しく感じられたことがだんだん遠ざかって、今度はファンタジーのようになってくる。だから今は、こういう作品のほうが作りやすいかもしれないです(笑)。
──その頃、どんなふうに生々しい経験と距離を置こうとされたのですか?
岩井 「サヨナラの引力」で、ク・ギョファンさんが演じたウノって、彼女(ジョンウォン)と付き合っている間、きっといろんな思い違いなんかもあったけれど、そのすべてを大切に感じていたはずなんですよね。それは、失ったあとに感じることであって、そこには相手に対する疑いようのないリスペクトがあった。そういう思いを映画にしたくて「Love Letter」を作りましたが、劇中で相手を失ったのは中山美穂さんが演じた渡辺博子のほうだったわけです。失ったのが男性だったら、当時の自分と重なりすぎて生々しかったのかなと思います。だから、もしウノが映画監督だったら、別れのあとに「Love Letter」を作ったかもしれない。映画を観ることで、そんな体験をさせてもらいました。
──確かに、ウノはゲームを作る人でもあったわけですしね。
ク・ギョファン 自分の経験から作った作品ほど面白いものはないですよね。もしウノが映画を作ったら、すごくディテールが細かくて、リアルなものになったんじゃないかと想像します。
まだまだ道を歩んでいる最中(ク・ギョファン)
──ク・ギョファンさんは、ご自身で映画監督もされています。クリエイターとして、岩井監督の作品から影響を受けたことはありますか?
ク・ギョファン 言葉で説明するのが難しい領域の話になってしまいますが、やっぱり、映画から受ける“雰囲気”というものを学びました。数100m離れたところから見ても、あの映画は岩井監督の作品だなとわかるような、そんな雰囲気です。
岩井 ウノくらいの年齢かもっと若い時期、僕は8mmフィルムで映画を撮っていたんですが、その頃の自分には雰囲気しかなくて、それだけで映画になると思っていました。そこから人生経験を経て、人に訴えかけられるものを作れるようになったというか。自分の経験の中で映画を作ろうとしても、なかなか認めてもらえない、そんな時代があったなと思い出しました。当時は感受性だけは高くて、手で触れるものを形にしたいけれど、その方法が最初はわからなくて。たどり着いたのがフィルムでした。学生時代はひたすら何かを追い求めていたけれど、なかなか形にならなかった。いろいろな体験を経て、世界が変わった感じがあります。よくも悪くも、こういう仕事をしていると失恋すら糧になる。いいことではないですが、俳優さんもそうで、苦い経験もすべて自分の糧になりますよね。そんな頃を思い出しますね。
──ク・ギョファンさんは、今年Netflixで配信されたドラマ「誰だって無価値な自分と闘っている」でも、岩井監督が言われていたような、何かを形にする前の焦燥感みたいなものを表現されていました。ご自身にも、そのような経験はありましたか?
ク・ギョファン 「誰だって無価値な自分と闘っている」にしても、自分自身にしても、今は何かを成し遂げたとは感じられず、まだまだ道を歩んでいる最中だなと思っています。でも、少しずつ懸命にやってきたからこそ、岩井監督に会うこともできました。このような“ストーリー”を紡ぐことができて、とてもうれしい気分です。私が今日感じたぎこちなさや緊張感、うれしさなどの簡単には表現できない気持ちを、演技にも生かしていきたいです。
岩井 今日、ク・ギョファンさんに会ってみて、対応力のある方だと感じました。「サヨナラの引力」を観てインスパイアされるところもありましたし、素敵な俳優さんなので、機会があったら一緒に作品を作れたらいいなと思います。
ク・ギョファン ぜひお待ちしています! 監督とご一緒できるのなら、何がしたいということはさほど重要ではない気がします。さっき話したことにつながりますが、僕は作品を観た人に「一緒にビールを飲みたい」と思ってもらえるような、そんな演技ができたらいいなと考えています。
Pontaパス会員限定【推しトク映画】
「サヨナラの引力」が土日平日いつでも1,100円
- 対象劇場
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TOHOシネマズ、ローソン・ユナイテッドシネマ グループ、松竹マルチプレックスシアターズ(全国のピカデリー・MOVIX)、コロナシネマワールド、OSシネマズ、キノシネマ
- 料金
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一般・大学生 1,100円 / 高校生以下 900円
※別途、追加料金が必要な特殊上映や特別席あり
- 対象
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Pontaパス会員、同伴者1名まで
- 利用条件
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会員ならいつでも、公開期間中何度でも利用可能
- 事前購入
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各劇場の公式サイト
- 利用方法
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映画「サヨナラの引力」推しトク映画クーポンサイトより、クーポンコードをダウンロード
映画「サヨナラの引力」推しトク映画クーポンサイトはこちら
プロフィール
ク・ギョファン
1982年12⽉14⽇⽣まれ。ソウル芸術⼤学映画学科卒業後、インディペンデント映画を中⼼に活躍し、演技に加えて脚本、演出、編集にも携わりながらキャリアを積んだ。2017年公開の「夢のジェーン(原題 / ⽇本未公開作)」で主要映画賞にて新⼈賞を多数受賞し、注目を集めた。主な出演作に映画「新感染半島 ファイナル・ステージ」「モガディシュ 脱出までの14日間」「脱走」「群体(原題)」、Netflixで配信中の「D.P. -脱走兵追跡官-」「寄生獣 -ザ・グレイ-」「誰だって無価値な自分と闘っている」などがある。
ク・ギョファン(구교환) | NAMOOACTORS(韓国語サイト)
岩井俊二(イワイシュンジ)
1963年1月24日生まれ、宮城県出身。映画監督・小説家・作曲家など多岐にわたって活動している。大学卒業後にミュージックビデオの仕事を始め、1993年にはオムニバスドラマ「if もしも」の1作「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」で監督を担い、日本映画監督協会新人賞を受賞した。1995年には初の長編映画「Love Letter」を手がけ、その後も「スワロウテイル」「四月物語」「リリイ・シュシュのすべて」「花とアリス」「リップヴァンウィンクルの花嫁」「ラストレター」「チィファの手紙」「キリエのうた」など話題作を生み出し続けている。



