竹内まりや「souvenir 2025 ~mariya takeuchi live~」 PR

2026年7月22日

竹内まりや特集|11年ぶりアリーナツアーを収録した映像作品、129分に刻まれたミドルオブザロードの矜持

竹内まりやのライブBlu-ray / DVD「souvenir 2025 ~mariya takeuchi live~」が7月22日にリリースされた。

本作には、2025年4月から6月にかけて開催され、のべ14万人を動員した11年ぶりの全国アリーナツアー「souvenir2025 mariya takeuchi live」からベストテイクを収録。「元気を出して」「プラスティック・ラブ」「人生の扉」「駅」「不思議なピーチパイ」など、時代を超えて愛されるヒット曲が多数披露されたステージの模様を楽しむことができる。

この特集では、「『シティポップの基本』がこの100枚でわかる!」の著者としても知られる音楽ライター / 選曲家の栗本斉が本作の見どころを解説。1978年のデビュー以来、ミドルオブザロードを貫いてきた竹内まりやというシンガーソングライターの魅力を深掘りする。

取材・文 / 栗本斉

各公演のベストテイクを編集した完全版

“思いやりと共感を持って歌うよ”。これは2024年に発表された楽曲「歌を贈ろう」の英語詞の一節を意訳したものだ。竹内まりやの歌には、自然と共感し、その世界へ没入できる力がある。大上段に構えるわけではなく、身を削るような私小説的な世界観とも違い、道ならぬ大人の恋などフィクショナルな表現も多い。それでも、自然にすっと耳に入ってくるのは、やはり彼女ならではの歌声が持つ力なのだろう。それが、ライブとなるとなおさら吸引力を感じさせるのだ。

竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」の様子。

竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」の様子。

このたびリリースされる映像作品「souvenir 2025 ~mariya takeuchi live~」を観れば、彼女の歌声の共感性を実感できるのではないだろうか。2025年、盛大に行われた11年ぶりとなるアリーナツアーのうち、日本武道館、横浜アリーナ、Kアリーナ横浜で行われた公演からベストテイクを組み合わせ、ツアーのセットリストを完全再現した本作。まさに1本のライブをフルで体感できる作品となっている。実際にツアーに参加した方も、残念ながら参加できなかった方も、本作を観れば彼女のステージの魅力を知ることができるはずだ。

観る者を没入させる理由の1つは、セットリストの素晴らしさにもあるのではないだろうか。冒頭は、ドラムビートのイントロから、ロックテイストのバンドサウンドへと一気になだれ込む、オープニングにこれ以上ないナンバー「アンフィシアターの夜」だ。「今夜もお客は満ぱい」という歌い出しで観客のボルテージが上がるのが、映像からも伝わってくる。続くポップな「家(うち)に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)」で竹内はギターを弾きながら歌い始め、そのままThe Beatlesの影響を前面に出した「マージービートで唄わせて」へと続く。このように、まるで場面が変わるように、次から次へと代表曲が披露されていくのだ。思わず引き込まれるのも当然だろう。

竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」の様子。

竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」の様子。

山下達郎率いるバックバンドが醸成する重厚なアンサンブル

またファンにとっては、本人やバンドメンバーがアップで映し出されることで、ライブ会場では気付かなかったディテールを知ることができるのも、こういった映像作品の楽しみの1つだ。例えば、竹内の衣装だけでもワンピースやミリタリー調のスーツ、セーターにパンツスタイルなど多彩なファッションを楽しむことができるし、それぞれのプレイヤーの表情やスタイルもよくわかる。そのうえで、会場の空気感も詰め込まれているのが、このライブ映像の特徴でもある。

ツアーメンバーは小笠原拓海(Dr)、伊藤広規(B)、鳥山雄司(G)、難波弘之(Piano, Key)、柴田俊文(Key)、宮里陽太(Sax)、ハルナ(Cho)、ENA(Cho)、三谷泰弘(Cho)、そしてバンマスの山下達郎(G, Cho)という10人。この鉄壁のアンサンブルで、竹内の音楽世界を見事に表現していくのである。彼女の楽曲は、非常に音楽性の幅が広い。屈託のないオールディーズスタイルのポップスもあれば、ちょっとハードなウェストコーストロック風、ブラックコンテンポラリーテイストのモダンなナンバー、そして朗々と歌い上げるカンツォーネのような切ないメロディまで、とにかくひとくくりのジャンルではない。しかも、分厚いバンドサウンドからシンプルなアコースティックサウンドまで、楽器編成もさまざまだ。これだけのバラエティに富んだ楽曲群を再現するのだから、いかに山下率いるバックバンドの力が大きいのかがよくわかる。

竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」の様子。

竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」の様子。

映像で振り返るツアーのハイライト

このツアーは「すべてが見どころ」と言ってもいいくらい、息つく暇のない内容だったが、その中でもいくつか印象に残るシーンを抜き出してみよう。まず、前半で披露されるアカペラの「リンダ」。山下を加えたコーラス隊がステージ前方に並び、一糸乱れぬ4人のハーモニーをバックに竹内が丁寧に歌声を重ねる。アカペラでここまで完璧に歌いこなすのはさすがとしか言いようがない。アコースティックギターの音色を生かしたアレンジで「元気を出して」を歌い上げるのも素晴らしいのだが、続く「告白」とのギャップが大きく、1人のシンガーがここまで表現の幅を広げられることに感嘆させられる。

今回のツアーは映像を効果的に使用しているのも特徴的で、「静かな伝説(レジェンド)」では、馬と一緒に映る竹内の姿がスクリーンに投影される。また、インターミッションの代わりに、ラジオ番組でのインタビューやデビュー当時の懐かしい映像を編集したVTRが流れ、デビュー以来の歩みを振り返ることができる趣向もファンにはうれしい。

竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」の様子。

竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」の様子。

ミラーボールが回る華やかな「幸せのものさし」では、竹内が観客に手を振りながらステージを歩き回り、「このへんで景気のいい曲を」という言葉から披露する「J-BOY」では派手に銀テープが発射される演出で盛り上げる。そして、シティポップリバイバルの象徴となったニュースタンダードの「プラスティック・ラブ」では、エンディングで山下のハイトーンボイスが冴え渡り、場内の高揚感は一気に最高潮を迎えるのだ。

歌が素晴らしいのはもちろんだが、彼女のMCもまた胸に迫るものがある。コロナ禍や困窮を極める世界情勢を憂うと同時に、そんな中で竹内が自分の歌に励まされたこと、またその歌が少しでも誰かの心に届いてほしいという切実な思いが伝えられる。そこからの「人生の扉」はとても説得力があり、歌い切った竹内が「声の続く限り歌っていきたい」と宣言し、本編ラストの「駅」につなげる姿に心を動かされてしまう。

さらに、アンコールも本編以上にテンションが高い。山下とデュエットするThe Everly Brothersのカバー「All I Have To Do Is Dream」から、「September」と「不思議なピーチパイ」という自身のヒットナンバーを当時の映像を交えながら連発、そしてバンドメンバーがステージからはけたあとに1人で歌う「いのちの歌」まで、とにかく彼女の歌声の魅力が全開。20数曲たっぷりと堪能すれば、大きな満足感を得られることだろう。

竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」の様子。

竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」の様子。

時代を超えて響く普遍性に満ちたポップス

こうしてツアーの完全版を通して観ると、改めて竹内というボーカリストの吸引力を感じるとともに、世代問わず多くのファンに愛されている理由がよくわかる。めったにツアーを開催しないのに、これだけのクオリティのステージを行えることに驚かされるし、古希を迎えた70歳の女性であることが信じられないくらい声も佇まいもみずみずしい。そして何より、ジャンルを超えて多彩な表現を見せながらも、彼女が時代の変化に流されることなく、一貫して普遍的なポップスを歌い続けてきたという事実が伝わってくる。「五線紙」や「象牙海岸」といった最初期の楽曲も、2024年にリリースされた12枚目のオリジナルアルバム「Precious Days」に収められた「歌を贈ろう」も含めて、すべてが王道を歩むことに徹している。長年のファンも最近知った若いリスナーも同じように楽しめるのが、彼女の楽曲の強みなのだ。

この「souvenir 2025 ~mariya takeuchi live~」は、2025年のツアーを記録した貴重なドキュメントであると同時に、竹内のミドルオブザロードを貫くボーカリストとしての意志が刻まれた作品と言えるだろう。

竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」の様子。

竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」の様子。

プロフィール

竹内まりや(タケウチマリヤ)

1978年、シングル「戻っておいで・私の時間」でデビュー。「September」「不思議なピーチパイ」など次々とヒット作を発表する。山下達郎と結婚後は作詞家、作曲家として「元気を出して」「駅」など多くの作品をほかの歌手に提供する傍ら、1984年に自らもシンガーソングライターとして復帰した。2019年9月には全62曲を収録した3枚組のベストアルバム「Turntable」を発表。オリコン週間アルバムランキング1位を獲得し、「昭和・平成・令和、3時代で1位を獲得した初の女性アーティスト」「女性最年長1位獲得アーティスト」となった。同年12月には「第61回 日本レコード大賞」にて「特別賞」を受賞し、「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たす。2024年10月に10年ぶり通算12枚目のオリジナルアルバム「Precious Days」を発表。2025年4月より11年ぶりの全国アリーナツアー「souvenir2025 mariya takeuchi live」を開催した。