Kroi「All in」 PR

2026年7月21日

Kroi「All in」インタビュー|アニメ「LIAR GAME」第2クールOP主題歌で描く二面性、対バンアーティスト4組も反応

Kroiがニューシングル「All in」を7月13日に配信リリースした。

「All in」は、3月に発表されたIncognitoのジャン=ポール・“ブルーイ”・モーニックをプロデューサーに迎えた「Kinetic feat. INCOGNITO」に続く、2026年第2弾シングル。テレビアニメ「LIAR GAME」第2クールのオープニング主題歌として書き下ろされた楽曲で、Kroiらしいファンクサウンドにダークなムードをまとわせたナンバーとなっている。

音楽ナタリーでは本作のリリースを記念して、Kroiにインタビュー。新曲のこだわりや、タイアップ作品である「LIAR GAME」について話を聞いた。また、8月にスタートする全国ツアー「Kroi Live Tour 2026 "JUNGLE"」を前に、今回対バンする4組のアーティストから寄せられた新曲やバンドへの印象、ライブへの意気込みに関するコメントも紹介。それらを交えながら話を聞くことで、今のKroiの姿に迫った。

取材・文 / 天野史彬

日常の中に溶け込める非日常を作る

──新曲「All in」は、艶やかさと同時にアンサンブルの緊張感、さらに音が増えるのではなく減っていくことで生まれるカタルシスなど、豊潤な魅力を持った1曲だと感じました。アニメ「LIAR GAME」第2クールのオープニング主題歌でもありますが、「LIAR GAME」という作品にはどんな印象を持っていましたか?

内田怜央(Vo) 僕はもともとドラマ版のDVDボックスも持っているし、原作コミックも全部実家にあるし、っていうくらい「LIAR GAME」が好きだったんですよ。なので、主題歌の話をもらったときはうれしくて。ただ、ドラマ版の「LIAR GAME」は中田ヤスタカさんのサウンドのイメージが強い作品なので、Kroiとしてどうアプローチしよう?という課題はあって。アニメ制作チームの方々は、アニメはドラマ版とは違った世界観で原作に忠実にやりたいとおっしゃっていたので、Kroiとしても自分たちなりに「LIAR GAME」の世界観を解釈したものを作ろう、と。結果的には、Kroiの楽曲の中でも特にダークな雰囲気の曲になったと思います。

内田怜央(Vo)

内田怜央(Vo)

──内田さんは「LIAR GAME」のどんなところがお好きですか?

内田 身近にありそうでないフィクション、みたいなものが好きなんです。「自分の知らない世界では本当にこういうことが起こっているんじゃないか?」と思えるような。どれだけ壮大なSFでも、「こういう人間の心の動きってあるよね」という身近な共感が表れたときに、人はそこに没入していくものだと思うんです。「LIAR GAME」は最初のプロットからそれを感じさせる作品で。「こういうこと、もしかしたらいつかの時代に起こっていたかもしれないし、これから起こるかもしれないな」と思わせる、そのリアルさやワクワク感が好きなんです。自分たちの作品でも、日常の中に溶け込める非日常を作らなければいけないと常々思っていて。そういう意味で、「LIAR GAME」はもの作りをする人にとって参考になる作品でもあると思いますね。

──「All in」は、音楽的な面では具体的にどんなことを考えられていましたか?

内田 アニメのオープニングなので、やっぱりスピード感は欲しくて。89秒という尺の中でどれだけシーンを見せながら駆け抜けることができるか?ということは大事にしました。アニメの主題歌をやらせていただくようになって、いろいろなアニメのオープニングを観るうちに、自分が好きなスピード感があることに気付いて。そこは軸にしつつ、今回はアニメのオープニングにしてはだいぶ暗い曲になったと思うけど(笑)、そういう部分も面白い曲になったんじゃないかなと思います。

これまでのKroiとは音の構造が違う

──「Method」(2025年リリースのテレビアニメ「SAKAMOTO DAYS」第2クールのオープニングテーマ)と同様、5人のアンサンブルの剥き出しの魅力が迫ってくる楽曲でもあると思いますが、パートごとに、それぞれどのような部分にこだわりながら制作に向き合ったのかも伺いたいです。まず、千葉さんはいかがでしょうか。

千葉大樹(Key) 昨日、この曲のステムデータを聴き返す機会があって。そのときに改めて、これまでのKroiの曲とは音の構造が違うと思ったんですよね。淡い感じのシンセのパッドがずーっと後ろにいて、ベースは歪んでアグレッシブっていう。Kroiのサウンドはドラムがわりとタイトめで腰高だから、重たいベースやダークなシンセをどうはめていくかは、ミックスの段階でけっこう難しかったと思います。Kroiの曲は毎回、実験的な音作りが多くて。ファンクが好きだからと言って、ただ70'sや80'sのファンクみたいにやるわけではないので、曲ごとに試行錯誤のポイントがあるんですけど、今回の曲に関して僕が試行錯誤したのはそこだったかな。アニメの主題歌なので、テレビやスマホで聴く人がほとんどじゃないですか。そういうところも意識しながら、シンセのパッドをどのくらい大きくするか、みたいなところも微調整していきました。正解があることではないんですけどね。

千葉大樹(Key)

千葉大樹(Key)

──曲ごとに音のバランスも変わっていくんですね。

千葉 1つのバンドなんだからミックスを一貫したほうがいい、という考え方もありつつ、でも同じ人たちが演奏して同じ人間がミックスしているなら、曲ごとに変化があっても最終的にはそんなに違わないところに着地するんじゃないかとも思うんです。逆に「常に同じ雰囲気のミックスをしよう」とか、「アルバム1枚を通して同じ雰囲気にしよう」と意識しすぎると縮こまっちゃうというか、僕はそういう考え方は嫌いなので。毎回、自由に、その曲に合うようにミックスするようにしていますね。

──益田さんは、ドラムに関してはいかがですか?

益田英知(Dr) 意識したのは、心地いいノイズ感のあるドラミングですね。ずっと聴いていても飽きないノイズってあるじゃないですか。個人的な感覚で言うと、この曲のシンセのパッドって、発振音を聴いているようなイメージなんです。だからこそ、ドラムもそこに合うようなものを心がけました。あと、こういうダークな雰囲気でやるドラムンベースのようなパターンって、Kroiでは意外とやっていなかったなと思って。そこも新鮮でよかったです。

益田英知(Dr)

益田英知(Dr)

有機的なギターを悠生的に

──長谷部さんはいかがですか?

長谷部悠生(G) 僕もダークさの演出は意識していました。あと、最近の自分のモードなんですけど、有機的というか。

益田 「長谷部悠生(ゆうき)」だしね。

内田 長谷部悠生的。ギャルじゃん(笑)。

長谷部 悠生的にはぁ、レコーディング超ダルかった。

──(笑)。

長谷部 悠生的に超ダルかったのがぁ、レコーディング前に生牡蠣を食ったらノロになってぇ。だからレコーディングのときもみんなに会えなかったしぃ、うちの真っ赤な部屋でぇ、有機的なギターを悠生的に弾いてたって感じぃ。

長谷部悠生(G)

長谷部悠生(G)

益田 レコーディング、本当に悠生来なかったんですよ。1回も悠生を見てないですから。

──え、本当に生牡蠣にあたって、っていうことですか。

長谷部 そうなんです。だから、ワウのフレーズは怜央がやってくれているっていう……。

──Kroiに取材をさせてもらうと、毎回誰かしらの具合が悪かったエピソードが出てくる気がします……。

関将典(B) 確かに(笑)。

──関さんは、ベースに関してはいかがですか?

 さっきから話に出ている、歪んだベースの音にはこだわりましたね。今回使ったエフェクターがMarkbassというメーカーのMark Vintage Preで、その電圧の規格が12Vなんですよ。でも、それを見ずに僕は18Vで駆動しちゃっていて。18Vだとめちゃくちゃ音がよかったんですね。電気が過剰に入っているから、すごいパワフルでカッコいい音になった。で、「よし、これでいこう!」と思ってレコーディングに臨んだら、過電圧でオーバーヒートしちゃって。急いで近くの電気屋に12Vのアダプターを買いに行ってつないだけど、やっぱり、ちょっと音が変わっちゃうんですよね。でも、なんとかがんばって工夫して、18Vのときくらいの「いい歪み」に持っていけました。ただまあ、「18Vの音が忘れられないな」という気持ちを胸に秘めながらのレコーディングではありましたね(笑)。

関将典(B)

関将典(B)

内田 改造しちゃいたいよね。

 そうそう、改造しちゃえばいいんだけど。

長谷部 俺は下痢していてレコーディングにいなかったから、今の話は初めて聞いた。チョベリバっすね。

 音作りをしているとき、みんなめっちゃテンション上がってました。悠生以外は。

──(笑)。でも、そうした電圧の勘違いから新しい音作りにつながっていくのは、とても面白い出来事ですよね。

 そうですね。偶発的な始まりだったけど、ここまで1曲通して激歪みっていうのは今までやったことなかったので新鮮でした。

こういうアニソンがあってもいいんじゃない?

──ボーカルについてはいかがですか?

内田 この曲、Aメロのビートとベースを土台に作って、そこにラップを乗せようっていうところから始まったけど、そのぶん、サビはファルセットでふわっと歌っているという。このくらいサビがささやかな曲って最近あまりないと思うし、「こういうアニソンがあってもいいんじゃない?」という提案でもあると思います(笑)。

長谷部 最近の曲は気合い入れすぎだよな、サビ。

内田 うん。重厚さとふわっとした感じの両方をちゃんと入れたい、という気持ちが最初からあって。ラップ部分も、当初はもっとゴリゴリな感じにしようと思っていたけど、結局ちょっと気が抜けた感じに落ち着いたんです。というのは、ベースを密度のある歪みで録ることができたので、そのパワーの上にパワーのあるラップを乗せるのは芸がないと思ったんですね。だから、歌詞を書くときにも「ちょっと抜こう」という意識はしていて。あと、こういうドラムが速い曲の場合、俺はドラムの音が細いほうが好きなんですけど、その細いドラムの下にしっかりとベースが入っているっていう、この音像のパワー感があれば、俺の歌がそこまで強くなくてもいいかな、というのもありました。それによって、気の抜けた感じと、パワーのある感じ、その間のちょうどいいところに差し込めたかなと思います。

Kroi

Kroi

──この曲は、アニメの89秒だけでなく、フルで聴いても展開がすごく魅力的な楽曲だと思うんです。ミニマムな緊張感があるというか。全体的な構成はどのように考えられましたか?

 怜央が作ってくれたデモをもとに89秒のアニメ版を作ったけど、そこから先をどうやって作ろうか?ということを話し合った末に、一旦、俺が考えた形で組み替えてみたんです。それをみんながOKしてくれて。この曲は、ベースラインに関してはサビのフレーズをそのまま2番に持っていってるんです。けっこうシンボリックなベースラインなので、こういうのもありかなって。それに、ドラムもかなり特徴的なので、ドラムとラップだけで聴かせるセクションもあったらカッコいいなと。そうやって構築していきましたね。

──直近のシングルを振り返ってみても、ロンドンでIncognitoのジャン=ポール・“ブルーイ”・モーニックをプロデューサーに迎えた「Kinetic feat. INCOGNITO」(2026年3月リリース)があったり、5人がリモートで制作した「Clay」(2025年リリースのCDシングル「Method」収録曲)があったり、レコーディングや楽曲制作において新しい取り組みをかなりやられていると思うんです。今、ご自分たちの制作スタイルに新しいものが生まれている感覚はありますか?

内田 「All in」以降で言っても、最近のレコーディングはもうめちゃくちゃになっていますよ。試行錯誤しながら、新しい方向性を探している状態です。初期衝動も一旦終わりましたし、そもそもメンバー全員の好きなものが若干違うバンドではあるので、「Kroiが今やりたいことはなんなのか?」ということを改めてちゃんと探そう、というモードになっていて。これ以上はネタバレになっちゃうので言いづらいんですけど(笑)。

長谷部 自由にはなってるよね。

内田 うん、やりたいことを探しているっていう状態です。

「All in」が提示する価値観

──今日、ここまでお話してくださった曲の構造などを通して、「All in」という曲でKroiが世間に投げかけている価値観があるとすれば、それはどんなものだと思いますか?

内田 「嘘をつきすぎない」ということですかね。リアルにしたかったんです。最初に話した、僕が「LIAR GAME」を好きな理由もそういうところにあるし。「LIAR GAME」の世界観にある狂気感や憎しみ、嘘……そういう怖い感情って、日常ではあまり見えないけど、みんな持っているものだと思うんです。それを、怖い感じに仕上げるのではなく、どこか気の抜けた感じで表現したかった。二面性を1つの作品に落とし込みたくて。自分が見ているものだけが本当じゃないし、その先に怖いものがあるかもしれない。そういうものを想像できる余裕があるって、いいことだと思うんです。

「All in」ミュージックビデオの撮影風景。

「All in」ミュージックビデオの撮影風景。

──そうですね。むしろ、想像できていないとマズいのかもしれないし。

内田 「想像する」って「疑う」ということでもあると思うんです。だから、「自分が信じるものを1回疑ってみないと、自分が求める真実にはたどり着けないかもしれないよ?」ということは、この曲で言いたかったです。俺自身、「ちゃんと疑って生きていこう」と思うので。